2012/01/24

「最悪シナリオ」が公文書でなかった理由

さきのエントリでは、菅直人政権が「最悪シナリオ」文書を目にしながら、その文書を公文書として扱わなかったのは「文書の管理のずさんさ」だとしたが、それは当たらないかもしれない。

さきのエントリで参照していたブログ記事、共同通信の不思議な原発記事 - kojitakenの日記のコメント欄で、id:flasher_of_thought さんが東京新聞の記事を紹介していた。

福島事故直後に「最悪シナリオ」 半径170キロ強制移住
2012年1月12日 朝刊


 福島第一原発の事故当初、新たな水素爆発が起きるなど事故が次々に拡大すれば、原発から半径百七十キロ圏は強制移住を迫られる可能性があるとの「最悪シナリオ」を、政府がまとめていたことが分かった。首都圏では、茨城、栃木、群馬各県が含まれる。

 菅直人首相(当時)の指示を受け、近藤駿介・原子力委員長が個人的に作成した。昨年三月二十五日に政府は提出を受けたが、公表していなかった。

 シナリオでは、1号機で二回目の水素爆発が起きて放射線量が上昇し、作業員が全面撤退せざるを得なくなると仮定。注水作業が止まると2、3号機の炉心の温度が上がって格納容器が壊れ、二週間後には4号機の使用済み核燃料プールの核燃料が溶け、大量の放射性物質が放出されると推定した。

 放射性物質で汚染される範囲は、旧ソ連チェルノブイリ原発事故の際に適用された移住基準をあてはめると、原発から半径百七十キロ圏では強制移住、二百五十キロ圏でも避難が必要になる可能性があると試算した。

 事故の拡大を防ぐ最終手段にも言及、「スラリー」と呼ばれる砂と水を混ぜた泥で炉心を冷却する方法が有効とした。スラリーの製造装置と配管は、工程表にも取り入れられ、実際に福島第一に配備されている。

 政府関係者は「起こる可能性が低いことをあえて仮定して作ったもので、過度な心配をさせる恐れがあり公表を控えた」と説明。近藤委員長は「当時、4号機のプールは耐震性に不安があり、そこにある大量の核燃料が溶けたらどうなるか把握しておきたかった」と話している。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2012011202000041.html

この報道によると「最悪シナリオ」文書は、近藤駿介氏が「個人的に作成した」ものであり、もともと公文書として作成されたものではない。私的な文書が、公文書の扱いを受けないのは当たり前のことではないだろうか。この文書は3月25日に政府に提出され、12月末に公文書の認定を受けたという。

私的に作成された文書が、のちに正式に認められて公文書に「昇格」したわけだから、これは評価すべきことであれ、非難するには当たらないと思うが、どうだろうか。

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