2013/11/15

日本ユニセフ協会に関するデマがますますひどくなっていく

日本ユニセフ協会に関するデマは、日を追うごとにますますひどくなっていく。

ユニセフ(UNICEF, 国連児童基金)は、その名の通りニューヨークに本部を置く国連機関であり、その職員は、国際公務員にあたる。このユニセフの日韓方面の活動を担当するのが、神宮前にあるユニセフ東京事務所。職員(国際公務員)はわずか11名しかいない。

もちろん、たった11名で日韓両国の支援活動を回すことは不可能なので、日本と韓国、それぞれの協力団体と協定をむすび、提携している。それが高輪に事務所をかまえる日本ユニセフ協会と、ソウルの韓国ユニセフ協会。日本ユニセフ協会は公益財団法人なので、職員は国際公務員ではなく、団体職員となる。職員数は66名。

日本ユニセフ協会(Japan Committee for UNICEF)は、ユニセフ東京事務所から“ユニセフ”と称することを公認された国内唯一の団体であり、日本国内の募金事業をはじめとする支援活動の全面的な委託を受けている。おそらく韓国ユニセフ協会も同じだろう。日本ユニセフ協会、韓国ユニセフ協会がそれぞれの国で募金活動を行い、それをユニセフ東京事務所を通じて、資金を必要とする地域に送るのである。

またアルファルファか…

昨日、こういうデマを見かけた。アルファルファモザイクが、日本ユニセフ協会のウェブサイトから以下を引用して「日本ユニセフ協会は、日本で集めた募金を韓国に送金している」と主張している。もちろん、デタラメだ。

ユニセフ東京事務所の現在の主な活動は、以下の通り。

  • 「子どもの権利条約」、「ミレニアム開発目標」、「ユニセフ中期事業計画(2006-2013年)」を枠組みとして、日本のODAによる国際開発協力事業とユニセフの現場でのプログラムの連携を促進する。
  • 国際開発協力を推進するさまざまな研究機関や学術団体、NGOとのパートナーシップ強化を通して、プロジェクト実施に貢献する。
  • ユニセフのプログラム分野に関するセミナーやワークショップを開催する。
  • 日本政府無償資金援助、及びJICAとユニセフのマルチ・バイ協力に特に力をいれ、ユニセフ現地事務所とのネットワークを通して、世界各国で子どもと女性を対象とした、感染症対策・母と子の保健改善・教育・社会開発などの分野で協力している。
  • 超党派の国会議員で構成されるユニセフ議員連盟のアドボカシー活動を支援する。
  • 韓国政府をはじめとする韓国のパートナーとの関係強化をはかる。
日本ユニセフ協会・ユニセフについて > 組織と財政:組織

ここで取りあげられているユニセフ東京事務所とは、上記の通り、国連機関であるユニセフ本部のおく事務所であり、日本ユニセフ協会の事務所ではない。このページでも「ユニセフ東京事務所はニューヨーク本部直轄の国際機関事務所」と明記されているし、さらに「民間への窓口としての役割を果たす公益財団法人日本ユニセフ協会と密接に協力」ともあるから、ユニセフ協会の事務所でないのは、一読してすぐに分かると思うのだが…。

また、「韓国政府をはじめとする韓国のパートナーとの関係強化をはかる」とは、言うまでもないが、日本で集めた募金を韓国に送金することではない。上記の通り、韓国ユニセフ協会と連携して支援活動を行う、という意味である。どこをどう読めば韓国に送金することになるんだ?

アグネス・チャンさんは無償奉仕

ユニセフ親善大使のアグネス・チャンさんがその活動を通じて利益を得ている、というデマも根づよい。ユニセフ本部が指名任命した黒柳徹子さん、日本ユニセフ協会が任命したアグネス・チャンさん、医師の日野原重明さんは、いずれも無報酬で広報活動に従事している。豪邸など建たない。

ちなみに韓国では、フィギュアスケート選手のキム・ヨナさんが本部指名の親善大使、俳優のイ・ビョンホンさんやウォンビンさんらが韓国ユニセフ協会の指名した親善大使である。こちらも無報酬だ。上述の通り、韓国にはユニセフ直轄の事務所が置かれていないので、キム・ヨナさんの親善大使としての活動を手配しているのは、東京事務所ではないかと思われる。

黒柳徹子さんの口座は個人口座

2ちゃんねるの創業者・西村博之さんが、「なぜ黒柳徹子さんの振込先口座を紹介しないのか」とアグネス・チャンさんに公開質問状を出しているが、これは無茶な話ではないだろうか。アグネス・チャンさんは、日本ユニセフ協会の依頼をうけて広報活動を無償で手伝っているだけの芸能人であり、協会の職員ではないから、協会の方針についてなんらかの公式な回答をできる立場ではないだろう。

黒柳徹子さんは、みずから銀行口座を開設して募金を集め、それをユニセフ本部に送金している。が、これは黒柳徹子さんが個人の善意としてやっていることであり、ユニセフの公式な募金ルートではない。だから、アグネス・チャンさんがユニセフ親善大使の職務として、黒柳さんの口座を公式に紹介できるわけがない。

また、黒柳徹子さんの口座は個人口座であるから、ここに寄付しても所得税の寄付控除は適用されないことにも注意が必要である。「1円でも多く送りたいから」と思って、黒柳口座に振り込んだのに、そのうち何%かは所得税として引かれてしまうわけだ。

[追記] もしかして分かりにくいかな…と思いつつそのままにしておいたが、案の定はてブで突っこみがあったので、やはり書いておく。寄付控除はもちろん寄付する側に適用される。公益財団法人である日本ユニセフ協会に寄付した場合、その金額に対して寄付控除が適用されて、あなたが納付すべき所得税額も少なくなる。黒柳口座に寄付したいときは、寄付控除が適用されないので、その金額に対しても所得税が課せられることになり、あなたが寄付のために使える金額は少なくなる。[/追記]

オレが個人的に不審に思うのは、「日本ユニセフ協会は、会計が不透明だ。ピンハネしているのではないか?」と主張する人たちが、同じ疑いを黒柳口座に対しては抱かないことだ。つまり、かれらが求めているのは会計の透明性ではない、ということだろう。

なお、日本ユニセフ協会は、財務諸表をウェブサイト上で公開している。「会計が不透明だ」と大げさに騒ぎたてる人ほど、じっさいは見ていないものである。

ユニセフ本部が善で、日本ユニセフ協会が悪なのか

こうした日本ユニセフ協会に関するデマをながめてみると、ほとんどがユニセフ本部を善、日本ユニセフ協会を悪と、あたかも真っ向から対立する組織であるかのような想定をしている。まったく、バカバカしいとしか言いようがない。実態は、すでに紹介した通りだ。

そのうえ、それらのデマを指摘すると「お前はあの許すまじきユニセフ協会を擁護するつもりか!」などと顔を真っ赤にして突っかかり、いかにユニセフ協会が偽善に満ちた悪の組織であるかについて、えんえんと熱弁を振るおうとする人たちがいるので、本当に面倒くさいことこのうえない。

あれを偽善だと思うなら、自分の信じる善行をやればいいじゃん。


関連リンク

はてなユーザーの、id:muchonov さんが書いてくれたよ。

関連して、オレが思ったことは、こういう感じです。


ユニセフ「承認協定」及び「協力協定」の電子テキスト

ユニセフ「承認協定」及び「協力協定」は、国連機関であるユニセフ本部と、世界36ヶ所に存在する各国の民間団体である国内委員会との間で、相互に交わされた協定書です。ウェブ上に電子テキスト化されたものが見あたらなかったので、閲覧と検索の便宜のため、テキストに起こしてみました。

18 件のコメント:

  1. イギリス、ドイツ、韓国、アメリカのユニセフ協会について調べたのですが、募金や寄付の100%をユニセフに送金しているところはありませんでした。
    イギリスだと76%が子供たちのための活動に使われ(http://www.unicef.org.uk/Get-Involved/Help-with-your-money/Where-your-money-goes/)
    韓国では80.2%が発展途上国の支援に使われ(http://www.unicef.or.kr/unicef/about/fund_kor.asp)
    ドイツでは84%がユニセフの世界的な活動に使われ(http://www.unicef.de/ueber-uns/geschaeftsbericht)
    アメリカでは90.5%が子どもたちを救うプログラムに使われている(http://www.unicefusa.org/partners/ngo/pdfs/UNICEF-Facts.pdf)

    日本に限らず、ユニセフ協会は寄付や募金で活動している団体のため、運営費等も当然そこから賄われているわけです(もちろん、規定の範囲内でですが)。
    世界的に見れば当たり前なわけで、それを批判するのは自分が常識知らずだと告白してるようなものですね。

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    1. けっきょくの話、募金に関心のない人たちが文句を言っている、という構図だろうと思います。ふだんから募金に関心を持っている人たちは、募金活動にコストがかかることをよく知っていますよ。

      ご紹介の資料のうち、アメリカのパーセンテージがとくに高いことが目につきました。アメリカにも日本とおなじく国内委員会が置かれていて、中間マージンの発生は日本とおなじ条件のはずです。おそらくアメリカにはもともと寄付の文化が根づいていることと、募金総額が404ミリオンドル(約400億円)と巨額になるため、必要経費が相対的に低くなったのでしょうね。

      ユニセフの活動に不満があるなら、批判するなり無視するなりすればいいですが、根拠のないデマを流して支援活動を妨害するのだけはやめてやれよ、って思いますね。

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    2. 上のアメリカに関するコメントは間違いです。

      約400億円のうち、民間からの寄付が約80億、連邦政府の拠出金が約300億あまりあって、400億というのはその合算ですね。90.5%というのも、この合算した金額に対してです。

      政府からの拠出金を調達するのはほとんどタダ同然でしょうから、極端ですがこれをゼロと仮定すると、400億に対する9.5%…つまり38億円を、民間からの寄付80億から使っていることになります。80億からすると38億は、47.5%です。

      日本の150億とか19%とかいう数字は、政府拠出金(約200億)を含まない、民間の寄付だけの数字ですから、アメリカに比べてもはるかに優秀でした。

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  2. そうするつもりです。ユニセフ協会しか寄付する先がないのならともかく、他にもちゃんとした団体があるのですから、寄付はそちらにするようにしています。風評に惑わされているといわれればその通りですが、あの協会が無くなっても他の団体がちゃんとしていれば援助する側もしてもらう側も特に困らないですから。

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    1. デマを流したり、誹謗中傷したり、それに対してわざわざ言い訳をする必要はまったくなく、ご自身のポリシーに合った団体に寄付すればよいと思います。

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  3. そもそも、日本ユニセフ(アグネス氏)自体が、日本のオタク系文化を、何の根拠もなく児童虐待の根源みたいにこき下ろす一方で、中国での人権問題には一切言及しない他、問題発言や行動が少なくないのですが。それは?

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    1. それは?と言われましても、それってユニセフとなんら関係がないですよね、としか言いようがないです。

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  4. そもそも日本ユニセフはユニセフと混同するような名前にしてることが問題
    まったく別の名前であればここまで問題にはならなかった
    トラの威を借る狐とおなじで、となりのヒュンダイと考えがまったく同じ
    自身の団体に自信があるなら別名にすることを提案します

    それと黒柳哲子さんの講座のくだりは指摘されたにもかかわらず修正すらしない杜撰さ
    あきれます

    上のコメントは別人ですが、そんな人を親善大使にするというのはどういう団体なんでしょうねってことですよ

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    1. ユニセフの窓口業務を担うために設立された団体がユニセフを称するのは当たり前のこと。
      レイシストに助言をもらっても、ユニセフも苦笑するほかないでしょう。

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  5. このコメントは投稿者によって削除されました。

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  6. 日本ユニセフ協会は、国際連合児童基金 (UNICEF) の日本支部ではない。また、日本ユニセフ協会は日本における民間協力の窓口として運営されている非政府組織であって、国連機関ではなのに、さも日本ユニセフがユニセフの一部だと誤解されるような広報活動をされていることが問題だと思うのですがどう思いますか?
    それと都合の悪いことはスルーですかそうですか(黒柳さんと、アグネスさん)
    特にアグネスさんはツイッター上で、ユニセフと日本ユニセフは同じものですよと発言もしています

    それと、日本ユニセフ自体はそれはそれでありだと思っていますよ(ただし、上記のようなやり口は納得できません、きちんと別の団体ですと公言してもらいたいですね)

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    1. ユニセフ東京事務所と日本ユニセフ協会の関係については、ブログ記事の本文に明記しています。というか、それが記事の主題ですよね。
      それが読めないのなら、次回のコメントは不要です。

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    2. 魔女狩りですな。
      いつの時代でも民衆の不満が溜まると「わかりやすい敵を作り出してそれを攻撃させることによって不満のはけ口をそらす」というのはこれはもはや政治における常套手段。
      だから魔女狩りも大抵は身寄りのないホームレス何かをとっ捕まえて適当に魔女だったという事にでっち上げて極力死んでも誰も困らない人間を魔女に仕立て挙げ、流行病も不景気も不作も全部この魔女のせいだった、という事にしてまずは民衆を安心させる、というそういう政策ですからね。

      最近だとNHK叩きも似たような事になってますね。
      ま、それだけ社会に不満があることの反映なんでしょうな。
      でも大抵の人間は馬鹿だから本当の不満が別のところにあってその不満が恣意的に逸らされているのだという事実に気がつくことはまず無いですし、政治的には気が付かれても困りますな。
      そういう社会への不満って吐き出させることに失敗して蓄積するとそれこそ暴動なんかに発展して治安が悪化しますからね。
      いわゆる必要悪って奴なんでしょうな、攻撃される側からすると凄い理不尽ですけど、でも魔女狩りは事実政治的にはそれなりの成功を収めてる、そういうことなんでしょうね。

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    3. 更に言えばどのコメントもアグネス・チャン個人が行ったこととユニセフという団体として行ったこととの区別が付いていませんね。
      こういう個と全体の区別が付かずに連続的に物事を捉える、というのはこれはもう完全に国民性ですな、この古来から続く伝統的な病気はそう簡単には治らない割りとどうしようも無いことですね。

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    4. レイシズムを行使する口実としてユニセフの名を利用しているだけで、ユニセフが掲げる理念の実現になんてさらさら興味はないってことなんでしょうね。だから、どれだけ事実を突き付けたところで、あるいはユニセフ本部がデマを流すのをやめてくれと再三再四言ったところで聞く耳を持つはずはない。

      まあ、あの手の人たちは、相手するだけ時間のムダですよ。さらりと笑って済ませるくらいで十分です。

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    5. レイシズムってのも結局は原理的に魔女狩りと同一で社会情勢が悪化すればするほど増える傾向にありますからな。
      ナチス・ドイツのユダヤ人殺戮だって当然それ相応の社会的背景があってナチスが正しかった、とまでは言わないにしてもユダヤ人の方にも明らかな落ち度がありますからね。
      もちろん、あの手の人達を相手にするのが時間の無駄なのは理解してますよ。
      ただ、そういう社会になってしまったんだなぁという諸行無常を感じただけです。
      それこそナチスじゃないですけど社会的背景を考えるとそうなる事自体は極自然な話の流れですからね。
      要するに、僕が言いたいのは「それが良いか悪いかは全く別の問題としてそれが起こること自体は仕方のないこと」という一種の”自然観”ですかね。
      それこそ魔女狩りじゃないですけどこういうのって古今東西を問わずして社会情勢の悪化に伴って必ず発生するじゃないですか。
      だからそれを見て「時代だな」って思ったわけです。

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    6. それからそう、僕も以前福祉活動は参加したことありますし、それにnishioさんも活動されてたことがあるのなら多分知っているとは思うんですがユニセフに限らずとも基本的に慈善事業団体と名のつくところ全般に共通していえますがぶっちゃけ自己愛性パーソナリティ障害の人がものっすごい多いんですよね。
      だから当然ユニセフ内部にも結構その手の人が数多くいたりして偽善的っていうのもあながち大きく間違ってはいなかったりするんですよね。
      そして多分、実際に慈善事業団体にはそういう人が多いし、同じようにしてユニセフ内部にもやっぱりそういう人達が沢山いる事から「事実かどうかは別としてそのプロセスを想像しやすい」って問題があるんでしょうね。
      だから例えそれが事実でなかったとしても容易く想像しやすい過程がある事から話にリアリティが帯びてしまう。
      これもまた、よくある典型的な思考の誤りで割りと改善しようのない、どうしようもないことですな。

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    7. ま、もちろんそういう人ばかりでもないし基本的に組織ってやつは大きくなればなるほど一枚岩ではなくなるものだが、それこそさっきの話ではないが個と全体の区別が付かないのが日本人の国民性ですからな。
      そういうものの考え方を出来るやつは中々いない。

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