2014/05/17

総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会 耐震・構造設計小委員会 地震・津波、地質・地盤 合同WG議事録

経済産業省 総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会 耐震・構造設計小委員会地震・津波、地質・地盤合同ワーキンググループ

総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会
耐震・構造設計小委員会 地震・津波、地質・地盤
合同WG(第32回)議事録

日時:
平成21年6月24日(水)10:00~12:30
場所:
経済産業省別館10階 各省庁共用1028号会議室
出席者:
主査
  • 纐纈 一起
委員
  • 安達 俊夫
  • 吾妻 崇
  • 阿部 信太郎
  • 岩下 和義
  • 宇根 寛
  • 岡村 行信
  • 衣笠 善博
  • 駒田 広也
  • 杉山 雄一
  • 高島 賢二
  • 古村 孝志
  • 吉中 龍之進

<敬称略・五十音順>

(…略…)

○纐纈主査
岡村先生どうぞ。
○岡村委員
まず、プレート間地震ですけれども、1930年代の塩屋崎沖地震を考慮されているんですが、御存じだと思いますが、ここは貞観の津波というか貞観の地震というものがあって、西暦869年でしたか、少なくとも津波に関しては、塩屋崎沖地震とは全く比べ物にならない非常にでかいものが来ているということはもうわかっていて、その調査結果も出ていると思うんですが、それに全く触れられていないところはどうしてなのかということをお聴きしたいんです。
○東京電力(西村)
貞観の地震について、まず地震動の観点から申しますと、まず、被害がそれほど見当たらないということが1点あると思います。あと、規模としては、今回、同時活動を考慮した場合の塩屋崎沖地震でマグニチュード7.9相当ということになるわけですけれども、地震動評価上は、こういったことで検討するということで問題ないかと考えてございます。
○岡村委員
被害がないというのは、どういう根拠に基づいているのでしょうか。少なくともその記述が、信頼できる記述というのは日本三大実録だけだと思うんですよ。それには城が壊れたという記述があるんですよね。だから、そんなに被害が少なかったという判断をする材料はないのではないかと思うんですが。
○東京電力(西村)
済みません、ちょっと言葉が断定的過ぎたかもしれません。御案内のように、歴史地震ということもありますので、今後こういったことがどうであるかということについては、研究的には課題としてとらえるべきだと思っていますが、耐震設計上考慮する地震ということで、福島地点の地震動を考える際には、塩屋崎沖地震で代表できると考えたということでございます。
○岡村委員
どうしてそうなるのかはよくわからないんですけれども、少なくとも津波堆積物は常磐海岸にも来ているんですよね。かなり入っているというのは、もう既に産総研の調査でも、それから、今日は来ておられませんけれども、東北大の調査でもわかっている。ですから、震源域としては、仙台の方だけではなくて、南までかなり来ているということを想定する必要はあるだろう、そういう情報はあると思うんですよね。そのことについて全く触れられていないのは、どうも私は納得できないんです。
○名倉安全審査官
事務局の方から答えさせていただきます。
産総研の佐竹さんの知見等が出ておりますので、当然、津波に関しては、距離があったとしても影響が大きいと。もう少し北側だと思いますけれども。地震動評価上の影響につきましては、スペクトル評価式等によりまして、距離を現状の知見で設定したところでどこら辺かということで設定しなければいけないのですけれども、今ある知見で設定してどうかということで、敷地への影響については、事務局の方で確認させていただきたいと考えております。
多分、距離的には、規模も含めた上でいくと、たしか影響はこちらの方が大きかったと私は思っていますので、そこら辺はちょっと事務局の方で確認させていただきたいと思います。
あと、津波の件については、中間報告では、今提出されておりませんので評価しておりませんけれども、当然、そういった産総研の知見とか東北大学の知見がある、津波堆積物とかそういうことがありますので、津波については、貞観の地震についても踏まえた検討を当然して本報告に出してくると考えております。
以上です。
○纐纈主査
やはり地震動も、少なくとも検討したということはないとまずいと思いますけれども、そのようにお願いしたいと思います。

(…略…)

○纐纈主査
岡村先生。
○岡村委員
先ほどの繰り返しになりますけれども、海溝型地震で、塩屋崎のマグニチュード7.36程度で、これで妥当だと判断すると断言してしまうのは、やはりまだ早いのではないか。少なくとも貞観の佐竹さんのモデルはマグニチュード8.5前後だったと思うんですね。想定波源域は少し海側というか遠かったかもしれませんが、やはりそれを無視することはできないだろうと。そのことに関して何か記述は必要だろうと思います。
○纐纈主査
名倉さん。
○名倉安全審査官
先ほど杉山先生から御指摘いただきました1点目につきまして、事務局から説明させていただきますと、中間報告提出時点におきまして、双葉断層ですけれども、東京電力は47.5kmで暫定評価としておりまして、それで地震動評価を実施した結果を報告してきました。途中で37kmに切り替えたのですけれども、それは地質調査の追加調査結果を踏まえた双葉断層の評価として短くしたということであって、地震動評価結果につきましては、37kmの補正は実は行われていなかったんですね。そういうこともありまして、当初報告がなされた暫定評価の47.5kmで審議を進めてきたので、それでまとめたと。
結局、双葉断層の37kmの評価をAサブグループで最終的な評価として妥当なものと認めたのが最後の回でしたので、地震動評価につきましては37kmの評価は実施されていない状況で、基本モデルだけは実施していただいたんですけれども、不確かさモデルについては実施していないということで、これを実はこの評価書の中にも少し書いてございますが、東京電力では、本報告までに37kmの評価を実施することにしておりました。したがいまして、47.5kmというのは、あくまでも中間報告提出時の評価、暫定的なものに対して評価を保安院の方でしたということでありまして、最終的な確定した双葉断層の長さとは少し違いが出てきておりますので、もう少し地質調査と地震動評価のところで明示的にわかるような形、一応書いてはいるんですが、もう少しわかるような形に修正させていただきたいと思います。
以上です。

(…略…)

総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会 耐震・構造設計小委員会 地震・津波、地質・地盤 合同WG(第32回)議事録

総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会
耐震・構造設計小委員会 地震・津波、地質・地盤
合同WG(第33回)議事録

日時:
平成21年7月13日(月)14:00~16:30
場所:
経済産業省別館10階 各省庁共用1028号会議室
出席者:
主査
  • 纐纈 一起
委員
  • 阿部 信太郎
  • 伊藤 洋
  • 岡村 行信
  • 衣笠 善博
  • 駒田 広也
  • 杉山 雄一
  • 高島 賢二
  • 高田 毅士
  • 古村 孝志
  • 翠川 三郎
  • 山本 博文
  • 吉中 龍之進

<敬称略・五十音順>

(…略…)

○纐纈主査
ただいまの御説明に御質問等ございましたらお願いいたします。岡村先生。
○岡村委員
貞観ですけれども、確かに地震動をどういうふうに推定するかというのは難しいとは思うんですが、ここでは佐竹ほか(2008)の断層モデルをそのまま、そこから地震動を計算されているんですが、そもそもこういう地震って何なんだということを今の知見で考えると、やはり連動型地震と言われているものだろうと考えるのが妥当だと思うんですね。それは、17世紀ですか、千島海溝で起こったとか、2004年のスマトラ沖地震がそういうものに相当すると考えているわけですけれども、そういう地震というものは、要するにもう少し短い間隔で普通に起こっている震源域が、複数の震源域が同時に破壊する、そういうことで起こるのだろうと言われているわけですね。
そういうふうに考えると、やはりここは、塩屋崎沖地震というものが1つある。もう少し北に行くと宮城県沖地震というものもある。そこをまたぐようなところでこの貞観の地震というものは考えざるを得ない。津波の情報だけではですね。そうすると、やはり今わかっている震源域のところは連動の範囲に含まれるのではないかと考えるのが、今の知識では妥当かなと私は思うんですよね。だから、これだとちょっと外れますよね。塩屋崎沖地震よりちょっと遠いところに貞観の震源モデルを考えて、それとは別のものだというイメージで今、話をされているんですけれども、別にしていいとはなかなか考えにくいのではないかと私は思います。
○纐纈主査
いかがでしょうか。
○東京電力(西村)
御指摘ありがとうございました。それぞれの地震をどのように同時活動させるかということは、なかなか難しいところだと我々思っているところですが、まずここで申し上げたいのは、塩屋崎沖自体が、それぞればらばらだったものを、同時活動を見るということを今回やっているということ、それから、貞観の地震も、波源モデルということもありますので、本来、もう少しばらばらしていたのかもしれないということはあるかと思いますが、仮にこういったものを考えた場合、目いっぱい見たとしてもということで今回ちょっと見てみたということです。
御指摘のように、例えば今回の貞観の地震と塩屋崎沖をつなげるかどうかということについては、ちょっと我々もそこまでできるかどうかというところがまだ十分な情報がないのかなと思いますが、そうは申しましても、今回ごらんいただきましたように、まず、こういったそれぞれの地震を考えても、Ssのレベルから考えますと、まだ余裕があるということを踏まえてこのようにさせていただいていると考えています。
ただ、まとめの中でも申し上げましたように、貞観の地震についてはまだ情報を収集する必要があると認識しておりますので、引き続き検討は進めてまいりたいと思ってございます。
○纐纈主査
岡村先生、よろしいですか。
ほかにいかがでしょうか。
それでは、特に御意見が追加ではないようですので。高島先生。

(…略…)

○纐纈主査
どうぞ、御意見ありましたら。岡村先生。
○岡村委員
最初の中間報告の案で、また貞観の話ですけれども、どちらも23ページに貞観のことが書いてあって、ここでは、新たな知見の波源モデルを震源断層と仮定した上で地震動を計算したと。それで、小さいということしか書かれていないんですね。
先ほど私が申し上げたのは、それでは足りないのではないですかということを申し上げたつもりで、要するに塩屋崎沖地震、それも連動させているということですけれども、貞観はそれ全体を含むものである可能性があるということなので、それで十分とは思っていないというつもりで言ったんです。それは、東京電力さんも、それでまた検討するとお答えになったと私は理解したので、そのことを少し何か検討していただきたいと思います。
○名倉安全審査官
済みません、逆にお聴きしたいのは、これは、今さまざまな研究機関において、こういった知見をいろいろと、調査結果が今どんどん得られているような状況でありまして、今後、いろいろな知見が得られていく中で、その時々に応じた対応をすべきということであるのか、それとも、今の中間報告における検討の中でそれをやるべきとおっしゃられているのか、そこのところはどちらということで理解すればよろしいでしょうか。
○岡村委員
この中間報告の性格をどう考えるかだと思うんですね。ただ、現状でわかっていることは、先ほど申し上げたことなわけですね。そこからどういう地震動が考えられるかということは、まだ研究としては全く行われていない話ではありますけれども、ただ、そういう海溝型地震に関する知見というものを考えると、それなりのものを考えるべきではないかというのが私の意見です。だから、それをここに入れていただけるのかどうかということだと思います。
だから、地震動に関しては、よくわかっていないということもありますから、今後検討するということでもいいのかもしれないですけれども、ただ、実際問題として、この貞観の時期の地震動を幾ら研究したって、私は、これ以上精度よく推定する方法はほとんどないと思うんですね。残っているのは津波堆積物ですから、津波の波源域をある程度拘束する情報はもう少し精度が上がるかもしれないですが、どのぐらいの地震動だったかというのは、古文書か何かが出てこないと推定しようがないとは思うんですね。そういう意味では、先延ばしにしても余り進歩はないのかとは思うんですが。
○名倉安全審査官
今回、先ほど東京電力から紹介した資料にもありましたけれども、佐竹ほか(2008)の中で、当然、今後の津波堆積物の評価、それは三陸の方もありましたが、それから、多分、南の方も今後やられる必要があると思いますが、そういったものによって、位置的なものにつきましては大分動く可能性があるということもありますので、そこら辺の関係を議論するためのデータとして、今後得られる部分がいろいろありますので、そういった意味では、今、知見として調査している部分も含めた形でやられた方が信頼性としては上がると私は思っていますので、そういう意味では、その時々に応じた知見ということで、今後、適切な対応がなされることが必要だと思います。その旨、評価書の方に記載させていただきたいと思います。
○纐纈主査
よろしいですか。
高島先生。
○高島委員
今の問題なんですけれども、例えば南海トラフなどでは、例えば宝永地震のときには、東海、東南海、南海が大体一緒に動いていたと。常にその様に震源域が壊れているわけではないわけですね。それで連動とおっしゃっていると思うんですけれども、そのときの地震動はどうなるか。浜岡については3つと2つと1つとそれぞれ計算していますよね。そういう御趣旨の指摘かと思ったんですけれども、佐竹先生ほかが書いているこのペーパーを知見と呼ぶのはどうかという気がします。文献や論文の類だと思うんです。知見というのはもう少し広く、属性的に明らかになったときに呼ぶのかなという気がしたんですが、表記上どうなんでしょうか。
○纐纈主査
ただ、連動させてしまうと、多分、佐竹ほかの結果によれば、津波の結果に合わなくなってしまうんですよね。
○岡村委員
このモデルは、津波堆積物の分布域まで津波が浸水するというか、それを説明するためのモデルなんですよ。要するに、どこにおいても滑り量とかいろいろファクターを変えていけば、ある程度のものはできるわけですよね。ですから、福島沖を含むようなモデルで、例えばもう少し幅を狭くするとか、沖側の部分をもう少し狭くするとかというような形で延ばせば、多分、津波の浸水域を合わせることはできると思うんですよね。このモデルをつくるときにはいろいろなファクターがありますから。
○纐纈主査
多分おっしゃるとおりだと思いますが、それだと、常識的なスケーリングとかなり離れてしまうので、地震動のモデルとしてはあり得ないものになってしまうのではないかと思いますけれども。
○岡村委員
それは、そこまで断言できるほど解析されているのかわからないですが、どうしてそういうふうに思われるわけでしょうか。
○纐纈主査
断層面サイズが大きくなれば、滑り量もそれに比例して当然大きくなりますから。
○岡村委員
いやそれほど、このモデルも、例えば大体同じ範囲で、5m、7m、10mといういろいろな計算をしているわけですよね。そのぐらいの差でかなり変わってくるということですから、私は、一応、モデルはみんな議論しましたけれども、少しずらして震源域を含むような形にすること自体はできるのではないかと思います。それは、やってみないとわからないですが。
○纐纈主査
御本人がそうおっしゃっているのでは、そのとおりかもしれません。
○名倉安全審査官
事務局からよろしいですか。 今回の中間報告におきましては、東京電力の方は津波の評価をまだ提出しておりません。そういうこともありまして、本報告で津波のところもやってくるはずですし、その中で、こういった知見も踏まえた場合の評価といったものが一体どういうふうにできるのか。その場合に、東京電力が設定した津波の解析条件ではありますけれども、そういったものに対して、津波堆積物のところ、要は得られているところの結果、そこら辺、ちょっと検討できるかどうかということはありますが、少しそういったもの、津波の波源を設定するときの考え方等との整合性もとった上で、地震動評価上何か影響があるのかという位置付けの検討は、少し必要なのかなと思っております。
○纐纈主査
何らかの記述をいただくということで御納得いただいたということでよろしいでしょうか。
ほかにいかがでしょうか。高島先生。

(…略…)

○岡村委員
あともう一点、またしつこいようですけれども、貞観ですが、貞観をどう扱うかというのは、やはりここも先ほどの福島と同じような問題があると思いますので、そこに全く触れないというのはちょっとどうかと思うんですけれども。
○東北電力(広谷)
貞観の地震につきましては、一応、中間報告書の方にも、この地震が海洋プレート内地震か、もしくはプレート間地震であった場合、敷地に与える影響という形で、簡単な記載はしてございます。ただ、やはり先ほどの佐竹ほかに対しまして直接的な記載は特にしておりません。
先ほど、東京電力さんの方から説明がありましたけれども、仮に佐竹ほかモデルに対しましてモデル8とかモデル10というものがありましたが、等価震源距離的に見ますと、この2つの断層についてはやはり女川と福島とほぼ同じようなところに位置しておりますので、今後、福島で検討されるようなことにつきましては、女川についても同じように鋭意検討していく必要があると考えてございます。

(…略…)

総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会 耐震・構造設計小委員会 地震・津波、地質・地盤 合同WG(第33回)議事録

2014/05/13

NHKニュースの『美味しんぼ』報道が、大阪大学・平川秀幸教授のコメントを訂正した

NHKニュースは『美味しんぼ』問題について5月12日、大阪大学の平川秀幸教授のコメントを載せていましたが、当初の報道では平川教授のかねてからの見解を反映したとは思えないものでした。

■NHK 5月12日 20時16分

美味しんぼ「不安 口にできなくなると問題」

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140512/k10014394061000.html

「美味しんぼ」の問題を巡っては、地元、福島県などからの批判は当然だという受け止めと同時に、影響が波及して不安を抱える人たちがそれを口にできなくなるようなことになれば、大きな問題だと懸念する声も出ています。

科学技術と社会の関係を専門に研究している、大阪大学コミュニケーションデザイン・センターの平川秀幸教授は「今回の『美味しんぼ』の内容は科学的に一面的で、福島県など当事者の批判を招いたのは当然と言える。その一方で、原発事故の直後に鼻血などの症状を訴える人がいたことについて、なぜそういうことが起きたか、どれくらい起きていたかなど十分な調査はされていない。そうしたなかで今回のように『不安』を取り上げたことと、それを否定する反応が起きたことで、表に出せない不安を抱えた人たちが、それを口にすることすら抑圧されることになると大きな問題だ。同じ放射線量でも不安の感じ方は人それぞれで、行政は一人一人の不安に対応していく必要があり、不安を口にできなければそれもできなくなる。今回の問題は、放射線に関する知識の問題というよりも、原発事故後に生じた国などへの不信感が3年たった今もぬぐえず、出している情報が正しくても受け入れられない状況があることの表れと考えられ、被ばくと鼻血の因果関係の問題としてだけ捉えると、見方を誤るのではないか」と話しています。

【美味しんぼ】自民議員は民主政権なら「福島の鼻血は原発事故が原因」、自民政権の今は「原発事故とは関係ない」と言いたいわけだ+東電が隠したいことは? : 晴 天 と ら 日 和

翌13日、平川教授のコメントが修正されました。こちらのほうが平川教授の本来の意図に近いものと思われます。相違点を強調します。

美味しんぼ「不安 口にできなくなると問題」

5月13日 12時33分

今回の「美味しんぼ」の問題を巡っては地元、福島県などからの批判は当然だという受け止めと同時に、影響が波及して不安を抱える人たちがそれを口にできなくなるようなことになれば、大きな問題だと懸念する声も出ています。

科学技術と社会の関係を専門に研究している、大阪大学コミュニケーションデザイン・センターの平川秀幸教授は「今回の『美味しんぼ』の内容は原発事故後の状況を描いたものとして取り上げ方に偏りがあり、福島県などの反発を招いたのはしかたがない。その一方で、事故後に鼻血などの症状を訴える人がいたことについて、低線量の被ばくでは起こりえないという説明はされているが、なぜそういうことが起きたか、どれくらい起きていたかなど十分な調査はされていない。そうしたなかで今回のように『不安』を取り上げたことと、それを否定する反応が起きたことで、表に出せない不安を抱えた人たちが、それを口にすることすら抑圧されることになると大きな問題だ。同じ放射線量でも不安の感じ方は人それぞれで、行政は一人一人の不安に対応していく必要があり、不安を口にできなければそれもできなくなる。今回の問題は、被ばくと鼻血の因果関係といった問題としてだけ捉えると、見方を誤るおそれがある。事故後に生じた国などへの不信感が3年たった今も拭えず、正しい情報であっても受け入れられない状況があることの表れとも考えられ、背景には賠償や生活再建などへの対応が被害者にとって十分でなかったことに対する不満など、さまざまな問題があるとみられる。人々の不安の背景に深く遡った対応が求められるのではないか」と話しています。

美味しんぼ「不安 口にできなくなると問題」 NHKニュース

「被ばくと鼻血の因果関係…」は場所が入れかわっただけですが、全体的にみて、初期報道では原発事故と鼻血との関連を強調したうえで否定する方向にかたむき(本来のコメントでは原発事故に限定していないのに、初期報道は「原発事故」に限定している点にも注意)、『美味しんぼ』の表現が科学的に「一面的」であり批判を招いたのは「当然」だと断じていて、コメント後半の「住民が不安を口にできなければ行政は対応できない」との趣旨に矛盾する傾向があります。また、福島などの「反発」が、初期報道では「当事者の批判」となっていて、批判の正当性がより強調されていました。

2014/05/11

ヘンリー・ストークス氏から聞き取りを行ったアンジェラ・エリカ・クボ氏のストークス氏と藤田裕行氏への手紙

祥伝社『英国人記者が見た連合国戦勝史観の虚妄』について、著者のヘンリー・ストークス氏がみずからの発言を捏造されたと述べたと共同通信が報じた問題で、ストークス氏から聞き取りを行っていたジャーナリストのアンジェラ・エリカ・クボ氏が、この問題にからみ辞職した際に著者ストークス氏と翻訳者の藤田裕行氏に送った手紙を公開している。

In regards to “Questions surround reporter’s revisionist take on Japan’s history”

Posted by Angela Erika Kubo on Friday, May 9, 2014 · 2 Comments

On May 8th, Kyodo News published an article concerning former New York Times Tokyo bureau chief Henry S. Stokes and his recent best-seller 英国人記者が見た連合国戦勝史観の虚妄 (Falsehoods of the Allied Nations’ Victorious View of History, as Seen by a British Journalist). The Kyodo News article raised questions about the veracity of the book and whether it really represented Mr. Stokes’s views or the views of the two right wing individuals, Hiroyuki Fujita, who helped “translate” the book and Hideaki Kase aka Tony Kase.

共同通信は5月8日、元ニューヨークタイムズ東京支局長ヘンリー・S・ストークス氏と、同氏の最近のベストセラー『英国人記者が見た連合国戦勝史観の虚妄』についての記事を発表しました。共同通信の記事は、書籍の真実性と、それが本当にストークス氏の見解を表したものか、あるいは2人の右翼的な人物である藤田裕行氏(彼が書籍の“翻訳”を支援した)や加瀬英明氏(別名・トニー加瀬)の見解であるかどうかについて、疑問を提起しました。

I am a journalist who is just starting her career and I was asked to do the transcripts for an English version of the book. After some time, I realized that I felt that Mr. Stokes, who is a very nice elderly journalist who I respect, was having his words taken out of context. I resigned from the job and relinquished any further payments. Here are the resignation letters I sent to Mr. Fujita and my notice and apology to Mr. Stokes.

私は、キャリアをまさに開始しようとしているジャーナリストです。そして、私はその書籍の英語版のために筆記を依頼されました。しばらくして私は、ストークス氏(私が尊敬する非常に優れた老ジャーナリスト)の言葉が文脈から切り取られているように思っていたことを実感しました[※このくだり読解困難]。私は仕事を降り、以後の報酬を全て放棄しました。私が藤田氏に送った辞表と、ストークス氏に送った通知と謝罪文を、ここに提示します。

I did speak with Kyodo News about why I resigned. I have no further comments. If you would like to know more, please speak to the publisher or the individuals involved.

私は、辞職した理由を共同通信に伝えました。私はそれ以上、言うべきことはありません。あなたがそれ以上のことをお知りになりたいのなら、出版社か関係者と話してください。

May 2nd, 2014

2014年5月2日

Dear Fujita-san,

拝啓、藤田様。

I hope you are doing well. I apologize for not contacting you earlier. I’ve actually been extremely busy with my full-time job with Jake Adelstein and have had to work unexpectedly through the weekend and overtime this entire week to work on a new project with him. For the time being, I am turning down all side jobs from anyone.

お元気でいらっしゃいますか。早いうちにご連絡しなかったことをお詫びします。私は本業であるジェイク・エーデルシュタインさんとの仕事で非常に忙しく、新しいプロジェクトのため、週末や勤務時間外も続けて丸々一週間、彼と一緒に予定外の仕事をしなければなりませんでした。当面、私はどなたからの副業もお断りしています。

I think that it would be best if you found someone else to finish the job, since I’ve become unable to focus on the transcripts, which take a lot of energy to accomplish. I’ve also become increasingly uncomfortable with the content of some of the recordings,which make it even more difficult. It seems that words are being put into Henry’s mouth and that the interviews don’t reflect his real opinions or thoughts–and that there are many leading questions (誘導尋問).

私は筆記することに注力できなくなったので(これをやりこなすには多くの力を必要とします)、あなたが仕事をやり遂げるために誰かを見つけられるなら、それが最善だと思います。私は録音内容の数ヶ所について(これはさらにそのことを困難にします[※文意不明。音声情報だから、の意味か])、ますます不快な思いをさせられました。それらの言葉はヘンリーさんの口に押し込まれていますが[※彼が発言したことにされた、の意味]、インタビューは彼の本当の見解や思考を反映していないように見えます。そして、多くの誘導尋問があったように見えます。

Here are the recordings which I have finished so far. If they are included in the 50, 000 yen sum that you gave me, then that is fine. I don’t require any more payment.

私がこれまでに収録した録音はここにありますが、あなたが私に支払った5万円の合計にそれが含まれているなら、結構です。私はそれ以上の支払いを求めません。

Sincerely,

敬具

Angela Kubo

アンジェラ・クボ

May 4th 2014

2014年5月4日

Dear Henry,

拝啓、ヘンリー様。

This is Angela Kubo, who had been working on the transcripts for the book.

アンジェラ・クボです。書籍のために筆記の仕事をしていました。

I’m very sorry to let you down, but I’ve decided to resign from the job because I had a moral issue with compiling these transcripts. I felt that what you said in the transcripts was completely different on important points from what is written in your book. Below is my resignation letter, which I sent to Fujita-san.

あなたをがっかりさせるのは本当に申し訳なく思っていますが、それでも私は仕事を降りることを決意しました。なぜなら、あの筆記を編集することに、道義的な問題を感じたからです。あなたが筆記の中で述べていることは、あなたの書籍の中に書かれている複数の重要な論点について、完全に異なっていると感じました。私が藤田さんにお送りした辞表を、以下に提示します。

Henry, I have a lot of respect for you, and I pulled out of this job because of this respect. I will be at the press club tomorrow and would like to speak to you about this transcripts. Perhaps you should consider speaking to someone about this issue, because I find it very serious that your book is very different from what you say in the audio.

ヘンリー様、私はあなたを非常に尊敬しています。そして、その敬意が、私をこの仕事から手を引かせてくれました。私は明日、記者クラブに臨みます。それからこの筆記について、あなたとお話をできればと思っています。もしかしたら、あなたは、この問題について誰かと相談することを検討しなければならないかもしれません。あなたの書籍が、あなたの録音の中の発言とは非常に異なっていて、私はそれを非常に深刻なことだと思うからです。

Sincerely,

敬具

Angela Erika Kubo

アンジェラ・エリカ・クボ

A note from the editor-in-chief: The questions as to whether Henry Stokes, a long time acquaintance, was deceived and turned into a mouthpiece for the Japanese right wing is a very fascinating one. However, I’m friends with and work with Angela Kubo. I know the reporter at Kyodo News who wrote the story well and we have worked together and I know Henry. The foreign journalist community in Japan is very small. All that being said, therefore, I’m unable to objectively write about this story at this time and will recuse myself for the time being. –Jake Adelstein

編集長から一言:ヘンリー・ストークス(長年の知人である)が、日本の右翼によって代弁者に対して捏造や歪曲をされたかどうかについての疑惑は、きわめて興味深いものだ。しかしながら、アンジェラ・クボ氏は、私の友人かつ同僚である。私は、よい記事を書いてくれた共同通信の記者を知っていて、一緒に仕事をしたこともある[※おそらくベン・ドゥーリー氏のこと]。また、私はヘンリーのことも知っている。日本において、外国人ジャーナリストのコミュニティは非常に狭いのだ。とにもかくにも、そういう訳で、私はこの物語について、現時点では客観的に書くことができないので、しばらく自粛することにする。(ジェイク・エーデルシュタイン)

In regards to “Questions surround reporter’s revisionist take on Japan’s history” : Japan Subculture Research Center

2014/05/10

祥伝社が発表したヘンリー・ストークス氏の「『英国人記者が見た連合国戦勝史観の虚妄』に関する各社報道について」

『英国人記者が見た連合国戦勝史観の虚妄』に関する各社報道について

平成26年5月9日

当該書の各社報道について、問い合わせをいただいておりますが、
あらためて著者の見解を確認したところ、以下のようなものでした。
著者からのメッセージを、ここに掲載します。

株式会社 祥伝社

著者の見解

  1. 共同通信の取材に基づく一連の記事は、著者の意見を反映しておらず、誤りです。
  2. 「(南京)虐殺否定を無断加筆 ベストセラー翻訳者」との見出しも、事実ではありません。
  3. 著者と翻訳者の藤田裕行氏との間で、本の内容をめぐって意思の疎通を欠いていたとの報道がありますが、事実と著しく異なります。
  4. 共同通信は、1937年12月に南京で起きた事に関する第5章の最後の2行の日本語訳が著者の見解を反映していないと報じています。共同通信は、問題を針小棒大にしています。
    著者の見解は、「いわゆる『南京大虐殺』はなかった。大虐殺という言葉は、起きた事を正しく表現していない。元々、それは中華民国政府のプロパガンダだった」というものです。
  5. 本書に記載されたことは、すべて著者の見解です。祥伝社と著者は、問題となっている2行の記述についても訂正する必要を認めません。

ヘンリー・スコット・ストークス

『英国人記者が見た連合国戦勝史観の虚妄』に関する各社報道について

Regarding the news reports of various media, we inquired with the author and obtained the statements below.

Shodensha co.,ltd.

The Note from the Author

  1. Various reports based on Kyodo News are wrong and they do not reflect the author's opinion.
  2. The cross-head of Kyodo News which says "Best-seller translator added lines to deny Nanking Massacre without author's consultation" is not true.
  3. The report which says the author and the translator, Hiroyuki Fujita, lacked communication regarding book contents is wrong and far from the truth.
  4. It was reported by Kyodo News that the last 2 lines of the Japanese translation of Chapter 5 regarding what happened in Nanking on December 1937 did not reflect the author's view. The Kyodo News made a big deal out of it.
    The author's opinion is: The so-called "Nanking Massacre" never took place. The word "Massacre" is not right to indicate what happened. It was orginally a propaganda tool of the KMT government.
  5. The above statements are all based on my opinion.
    The publisher, Shodensha, and the author agreed that we have no need to make any corrections for the 2 lines in question at this stage.

May 9, 2014

The author

Henry Scott Stokes (Signature)

『英国人記者が見た連合国戦勝史観の虚妄』に関する各社報道について

共同通信の反論記事

南京虐殺加筆報道を著者「否定」 記事正確と共同通信

 米ニューヨーク・タイムズ紙元東京支局長が、日本軍による「『南京大虐殺』はなかった」と自著で主張した部分は翻訳者による無断加筆だったとして、修正を求めていると伝えた共同通信の報道について、出版元の祥伝社は9日、これを否定する「著者の見解」を発表した。

 著書は「英国人記者が見た連合国戦勝史観の虚妄」(祥伝社新書)。元東京支局長は共同通信の取材に対し「(翻訳者に)後から付け加えられた。修正する必要がある」と明言していたが、「著者の見解」では「記事は著者の意見を反映しておらず誤り」と指摘している。

 共同通信社総務局は「翻訳者同席の上で元東京支局長に取材した結果を記事化したものです。録音もとっており、記事の正確さには自信を持っています」としている。(共同)

2014/05/09 23:22 【共同通信】

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