2014/05/13

NHKニュースの『美味しんぼ』報道が、大阪大学・平川秀幸教授のコメントを訂正した

NHKニュースは『美味しんぼ』問題について5月12日、大阪大学の平川秀幸教授のコメントを載せていましたが、当初の報道では平川教授のかねてからの見解を反映したとは思えないものでした。

■NHK 5月12日 20時16分

美味しんぼ「不安 口にできなくなると問題」

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140512/k10014394061000.html

「美味しんぼ」の問題を巡っては、地元、福島県などからの批判は当然だという受け止めと同時に、影響が波及して不安を抱える人たちがそれを口にできなくなるようなことになれば、大きな問題だと懸念する声も出ています。

科学技術と社会の関係を専門に研究している、大阪大学コミュニケーションデザイン・センターの平川秀幸教授は「今回の『美味しんぼ』の内容は科学的に一面的で、福島県など当事者の批判を招いたのは当然と言える。その一方で、原発事故の直後に鼻血などの症状を訴える人がいたことについて、なぜそういうことが起きたか、どれくらい起きていたかなど十分な調査はされていない。そうしたなかで今回のように『不安』を取り上げたことと、それを否定する反応が起きたことで、表に出せない不安を抱えた人たちが、それを口にすることすら抑圧されることになると大きな問題だ。同じ放射線量でも不安の感じ方は人それぞれで、行政は一人一人の不安に対応していく必要があり、不安を口にできなければそれもできなくなる。今回の問題は、放射線に関する知識の問題というよりも、原発事故後に生じた国などへの不信感が3年たった今もぬぐえず、出している情報が正しくても受け入れられない状況があることの表れと考えられ、被ばくと鼻血の因果関係の問題としてだけ捉えると、見方を誤るのではないか」と話しています。

【美味しんぼ】自民議員は民主政権なら「福島の鼻血は原発事故が原因」、自民政権の今は「原発事故とは関係ない」と言いたいわけだ+東電が隠したいことは? : 晴 天 と ら 日 和

翌13日、平川教授のコメントが修正されました。こちらのほうが平川教授の本来の意図に近いものと思われます。相違点を強調します。

美味しんぼ「不安 口にできなくなると問題」

5月13日 12時33分

今回の「美味しんぼ」の問題を巡っては地元、福島県などからの批判は当然だという受け止めと同時に、影響が波及して不安を抱える人たちがそれを口にできなくなるようなことになれば、大きな問題だと懸念する声も出ています。

科学技術と社会の関係を専門に研究している、大阪大学コミュニケーションデザイン・センターの平川秀幸教授は「今回の『美味しんぼ』の内容は原発事故後の状況を描いたものとして取り上げ方に偏りがあり、福島県などの反発を招いたのはしかたがない。その一方で、事故後に鼻血などの症状を訴える人がいたことについて、低線量の被ばくでは起こりえないという説明はされているが、なぜそういうことが起きたか、どれくらい起きていたかなど十分な調査はされていない。そうしたなかで今回のように『不安』を取り上げたことと、それを否定する反応が起きたことで、表に出せない不安を抱えた人たちが、それを口にすることすら抑圧されることになると大きな問題だ。同じ放射線量でも不安の感じ方は人それぞれで、行政は一人一人の不安に対応していく必要があり、不安を口にできなければそれもできなくなる。今回の問題は、被ばくと鼻血の因果関係といった問題としてだけ捉えると、見方を誤るおそれがある。事故後に生じた国などへの不信感が3年たった今も拭えず、正しい情報であっても受け入れられない状況があることの表れとも考えられ、背景には賠償や生活再建などへの対応が被害者にとって十分でなかったことに対する不満など、さまざまな問題があるとみられる。人々の不安の背景に深く遡った対応が求められるのではないか」と話しています。

美味しんぼ「不安 口にできなくなると問題」 NHKニュース

「被ばくと鼻血の因果関係…」は場所が入れかわっただけですが、全体的にみて、初期報道では原発事故と鼻血との関連を強調したうえで否定する方向にかたむき(本来のコメントでは原発事故に限定していないのに、初期報道は「原発事故」に限定している点にも注意)、『美味しんぼ』の表現が科学的に「一面的」であり批判を招いたのは「当然」だと断じていて、コメント後半の「住民が不安を口にできなければ行政は対応できない」との趣旨に矛盾する傾向があります。また、福島などの「反発」が、初期報道では「当事者の批判」となっていて、批判の正当性がより強調されていました。

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